吉田悦志ゼミナール 明治大学国際日本学部

Etsushi Yoshida Seminar

本日のゼミ記録(後期第6回)

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 寒い寒い。男だけど冷え性っぽいんですよねー。

 ゼミ記録を書きます。

 今日の課題は先日に引き続き、津本陽『勝海舟 私に帰せず』。議論が盛り上がった+読み終わってなかった人も多かったてのもあり、2週またぎにしましたが、やっぱり先週である程度まとまっちゃってた所もありましたねwただ。約一月ぶりの復帰戦だった末永の意見も聞けたのはよかったと思います。

 議題としては「勝海舟は何のために生きたか」ということが中心。色々な意見が出ましたが、まとめると「自分を取り上げてくれた幕府・徳川への恩は忘れずに“沈みかけた船の責任者”としての立場を持ちながらも、新しい社会を作るために活動した人であり、「~のために」と1つにまとめてしまうのは難しい」ということでした。

 ただ、それは“特定の誰かに対してプラスになるが、代わりに他の誰かのマイナスになること”を目指したのではなくて、“誰にとってもプラスになること”を目指したからで、それはまさしく作品名の「私に帰せず、公のために」という考え方だろう、と。

 また、そこから通じて「なんでこの作品って途中から勝海舟自身が消えかけてるの?」という所に言及できたのは良かったんじゃないでしょうか。恐らくほとんど全員一致で「読みにくい」と感じていたこの作品、下巻になるともうほとんど歴史解説書みたいになってきて、勝海舟のストーリーが出てこないことが読みにくい要素の1つだったと思います。

 議論で出てきたのが「色々な出来事・人物に大きな影響を与え、手助けをしているが、実際に動いているのが勝自身ではない」ということ。だから、彼自身を主人公として押し出すように描けない。『竜馬がゆく』のある坂本龍馬や、『燃えよ剣』のある土方歳三とは全く違う所ですね。先週話題に出た「企画者と実行者が別にいた」という考え方にも繋がると同時に、これもまた勝という人が「私に帰せず、公のために」動いたからだと言えるのではないでしょうか。

 そして、このことを例えた先生の表現が抜群。

「インクを一滴、水に垂らした」イメージ。

 幕末という時代は、ゴチャゴチャと混迷していたからこそ、ある意味で不安定で、何かの要素が加わればその影響を受け、簡単に変化していく時代だったと言えます。だから、濃いインクが水に触れればその瞬間に全体に広がって、大きな影響を与えることになるように、幕末という時代に触れた、勝海舟という大きな要素は色々な物事に強い影響を与えていった。広がったインクは水に溶けてしまってそれ自体は判然としない。同じように、勝という人もその影響が大きく広がったことによって、彼自身がハッキリとしていないんだな、と考えられます。それに、まだ勝海舟自身の話が多い上巻では、彼自身の成長が描かれている、つまりはインクが垂らされて水面に触れるまでの期間を描いているとも言えますしね。

 流石、先生。

 来週は映画観賞予定。また別にメーリス回すのでそれで確認をしましょうね。ただ、その次に控える『峠』は分量多いので早速読み始めたいところですな。

 大分遅い時間になってしまった・・・

須山。

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